原木シイタケを世界に(貫井 香織さん/埼玉県)


埼玉県入間市で、原木シイタケや緑茶をメインに栽培する貫井さん。一般企業2社を経て農業に携わる貫井さんの、バイタリティある行動の背景をお聞きしました。

企業で働き感じた農業の特別さ

私の家は代々続く農家で、私はその長女として生まれ育ちました。そのため農業は常に身近にあったものの、進路を考える上で、とくに家業を継ぐことを意識したことはありませんでした。家族にも、家に残ってほしいと言われたことはなかったため、卒業後は就職のため実家を離れ、東京の企業に勤めました。
新卒1社目は、創業3年目のベンチャー企業で働き、ゼロから事業を立上げるような経験をしました。その後PR会社に転職しました。一般企業に勤めたことで、自分の手で何かを作り、お客様に提供出来る農業が、とても恵まれた職業であると感じることができました。そこで、30歳手前で家業を手伝うことを決意し、実家に戻り就農しました。今では、この仕事を始めて10年が立ちましたので、結果的に社会人生活の中で一番長く続けている職業です。

新たな販路と製品の拡充

家業を手伝う上で、それまで両親が培ったシイタケとお茶の栽培・販売業務に加えて、販路の拡大と、製品ラインアップの拡充に、取り組んできました。当時の販売先は、実店舗と市内のスーパー2-3店舗程度でした。より多くの方に美味しいシイタケを広めたいと思い、レストランにも直接出荷するようにし、海外(パリ・香港)にも出荷するなど、積極的に販路を増やしていきました。また販売する製品にもバリエーションをもたせるようにしたことで、東京でのマルシェや、百貨店でのイベントに出ることが出来たり、カタログギフトセットも始め、取り扱いの幅を広げました。

今は希少な「原木栽培」


私たちのシイタケは、「原木栽培」と言う方法で山の中で育てています(現在全国で販売される生シイタケの多くは、「菌床栽培」によるもの)。「原木栽培」では、その名の通り原木に穴を空け、そこにキノコの種を植え付け、自然の環境下栽培します。そのため、施設内で栄養を与え栽培をする「菌床栽培」と比べて手がかかり、収穫の周期も長いため、今では栽培者もすごくめずらしくなっています。また、寒い時期に育てた方が肉厚で美味しいシイタケができるので、貫井園では秋から春にかけての半年しかシイタケの出荷をしていません。手間はかかりますが、その分身のしまったぷりぷりのシイタケを提供出来るので、この方法を続けています。

クリエイティブで自由な職業


農業は、すごく楽しい仕事です。過去に働いていた会社では、いずれも自分たちが何か販売物を作り出すという業務はなかったんですね。それもあって、育てて形にしていく農業が新鮮に感じましたし、またそんな仕事が面白いと思いました。農業は、どこで何をつくるか、本当に人それぞれです。その人に合うやり方、やりたい事など、色んなバリエーションがあるので、ピッタリあう形にはまった時は、得られる楽しさが大きいと思います。


(原木にシートを被せて保温する)


(この1つ1つに、シイタケの種が)


(重い原木を軽々持ち上げて見せる貫井さん)

鮮度・品質に自信を持ってお届け

農産物の中でも、お茶やシイタケは、作り手の技術によって味わいに差が出る品目です。とくにシイタケは品質管理がとても重要で、時間がたつと繊維がゆるくなり、べチャットしてきます。そのため鮮度の良い状態のものを送り出すことや、店頭に並ぶまでの工程にも非常に気を配っています。貫井園というブランドで胸を張ってお出しできるように、当店では、採れたて新鮮で肉厚ものを、自信をもって直送します。また、肉厚ぷりぷりのシイタケは油との相性がとっても良く、揚げても焼いても、煮ても蒸しても、どんな料理方法にも合います。食べ方の提案として、フレンチやイタリアンのシェフや和食の調理人さんに、レシピを考案してもらったりもしています。ラクマでご購入される方にもレシピを同梱していますので、是非ためしてみてください。

おいしく食べられる形を追求

現在は、より多くの方々の食生活に、手軽にシイタケを取り入れてもらいたいと思い、加工品も販売しています。例えば、旨みの多い干しシイタケを加工したパスタソースや、塩分控えめに旨みを活かしたスパイスなどがあります。シイタケそのものを調理して食べる方だけでなく、そういった習慣がない方でも取り入れやすいように、製品化しました。新商品の開発は、誰かの紹介によって進んだり、農業女子PJで出会う女子たちや、参画企業さんとの話の中で実現するものもあります。人との繋がりから生まれるコラボは、すごく楽しいなと思います。ただ、全てが成功するわけではありません。実際に販売している製品数に対して、2倍くらいは試作しています。トライ&エラーを繰り返して、より良い製品を生み出せればと思っています。

夢は葡萄から手がけるワイン造り


最近は、美味しいワインのための葡萄作りへの挑戦を始めました。ワインを造りたいと思ったきっかけは、単純に私がワインが大好きだからです。ワインに関しては、こんなに美味しいものがあるんだ!と感動するような出会いがあり、そんなワインを自ら作れるようになりたいと思いました。販売できる本数を醸造できるようになるまで、もう少し時間はかかりますが、せっかく農業をやっているのだから、自分の手で好きなものを作りたいなと思っています。原木シイタケとワインのマリアージュを追求していくのも楽しいです。父の代で既存のお茶栽培に加えて、原木シイタケを始め今に至ります。いつかそこに私が果樹という分野を加えて、また新しい形態を作っていけたらと思います。

【プロフィール】


* お名前:貫井 香織さん

* 地域:埼玉県入間市

* ショップ名:貫井園ラクマショップ

* ショップURL:https://fril.jp/shop/nukuien

fril.jp

関連記事

アプリで暮らしを
ちょっとプラスに
累計4,000万DL突破!
トップへ