地域で取り組む新しい農業(石橋さん/千葉県)


千葉県山武市で、お米や落花生のQなっつをメインに栽培される石橋さん。地域で協力しながら結果を出す農業を考える石橋さんから、農業を楽しむコツをお聞きしました。

会社員から農家へ

農業を始めたのは、2017年です。主人の実家が100年続く農家なのですが、結婚後に主人が脱サラし家業を継ぐことになったのが、きっかけの1つです。主人も私も結婚当初は会社員で、土とは無縁の仕事をしていました。主人が農業を始めてからも私は一般企業で仕事をしていましたし、会社勤めの方が経済的にも安心だと考えていたので、農業には興味すら無かったのが正直なところです。気持ちの変化があったのは、この地域が災害に見舞われた時です。普段見ないような豪雨で、この辺一体の葉物野菜が大きな被害にあいました。露地栽培をしている農家さんたちは通常出荷ができなくなり、地域の葉物の販売量が大幅に減ってしまったんです。そんな中、それまでは出荷していなかったハウス栽培のほうれん草を一部販売してみたところ、予想以上の需要があり喜ばれました。自ら栽培した農産物が必要とされることを実感したことをきっかけに農業に興味を持ち、もっと私にも出来る事があるのではないかと考えるようになり、自営業である農家を手伝い始めました。

農業は経営を考えること

農業の手伝いは、最初は出荷作業だけをしていました。ですがどうせやるなら成果を出せるようになりたいと思い、従来のやり方を引き継ぐだけではなく、新たな取り組みができないかと考えるようになりました。自分が主体となって考えることによって日々発見も反省も増えるので、益々農業が楽しくなります。最近では地域の農家さん10名位で集まって、情報交換や勉強会などを開催しています。そこでは日々の農作業からお互いに教えあったり、農業に関する新たなアイディアを出し合ったりします。

地域で取り組む農業

農業を通してできた繋がりから、新しい取組みも生まれています。この地域の農家の集まりから、何か生産販売をしてみたいという話になりました。そこで始めたのが、「おおまさり」と言う落花生の栽培です。落花生はこの地域の特産品で地元では有名ですが、全国的にはまだまだ馴染みが薄いと感じています。より多くの方に様々なシーンで召し上がってもらうために、今はピーナッツバターや落花生シォンケーキなど、加工品へのチャンレンジも企画中です。


(団体名「ぼっちチェルリーズ」、新商品の検討会)

新品種「Qなっつ」の挑戦

個人では、落花生の新品種「Qなっつ」の栽培にも取り組んでいます。「Qなっつ」は2018年の秋に発売開始したばかりの品種ですが、甘みが強く後味がさっぱりしているのが特徴です。ショ糖は一般のピーナッツのなんと約1.4倍とも言われていて、特にナッツが好きな人は食べた瞬間に違いが分かると思います。


(秋の収穫にむけての種付け)

薄皮も栄養がたくさん

食べ方は、そのままピーナッツとして食べていただくのが一番オススメです。薄皮(渋皮)が苦くないのも特徴で、栄養素が一番ある部分なので、ぜひ薄皮ごと食べてみてほしいです。ポリフェノールに近い成分が入っていてお肌にも良いとされているので、女性にも気軽に召し上がってほしいですね。またサラダにのせたり、砕いたピーナッツを入れたピーナッツチャーハンも、歯ごたえと香ばしさが出て美味しいです。薄皮が付いたままトースターで軽く焼いても、香り高くなってオススメです。今は栽培する農家さんが少なく販売自体が多くないのですが、今年はたくさん収穫してより多くの方に届けたいと思っています。

仲間が増える喜び


農業に関して正直当初は、地味で暗く、キツイ、孤独というイメージがありました。ただ実際にやってみると人脈が広がり、毎日学びも多く楽しく仕事が出来ています。農業女子PJや、地域の農業女性ネットワーク「山武農業女子ネットワーク・サンスマイル」などに加盟することで、それまで以上に仕事仲間の幅が増えました。それぞれ栽培する農産物は違いますが、相互に教え合うことや協力し合えることも多くありますし、今では、こんなに楽しい仕事を農家のお嫁さんになってやらないのは勿体無い!と思えるくらい充実しています。暑さや寒さはキツイですが、すごくやりがいがある職業だと思います。

代々続くお米作り

地域で取り組む「おおまさり」や、私が取り組む「Qなっつ」の栽培以外にも、お米の栽培を代々行っています。「ミルキークイーン」と言う品種を栽培していて、コシヒカリの仲間でモチモチしていて冷めてもおいしいのが特徴です。そのため、お弁当やおにぎりにするのにとても向いています。私自身大好きなお米ですが、まだまだメジャーな品種ではないので、もっと多くの方に知っていただき食べてもらいたいです。


(田植えが終わった後の5月の稲穂)


(青々とした空の下の栽培環境)

学びの多い対面販売

マルシェなどにも積極的に参加しています。対面販売の場は、生産者と消費者との温度差を知ることが出来る貴重な場だと思っています。生産してるときに自分が思い描く狙いと、消費者側の反応が異なることが多々あります。例えば落花生に関しては、若い方にも食べていただきたいと思い可愛いパッケージにしたんですが、実際に手に取る多くの方はご年配の方でした。こちらが想定していることと消費者との間にズレがあることが分かり、パッケージ案の改良に繋がりました。そういった日々の学びが、消費者に合わせた提案方法考えるきっかけとなります。農家も個人事業主なので、どうやって販路を掴むかが鍵なんじゃないかと今は考えています。

つながりが財産に

今私が学び合い切磋琢磨できる仲間とは、農業を始めなければ知り合うことが出来ませんでした。また、地域の取組みを始めなければ、こんなに充実した生活を送ることが出来なかったと思います。ただ農業を手伝うだけでなく、自分たちで考え成果につなげたいという行動が、農業をより楽しくしています。農業を通して実際多くの学びがありましたし、自分が生産する農産物を美味しいと言ってもらえることと、地域の繋がりができたことが大きな喜びです。

【プロフィール】

fril.jp

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