月間100万円の売り上げ経験をもつ、人気ハンドメイド作家ミューさんの話

公開日:2020.11.12 更新日:2020.11.12

不用品の私物販売から、ハンドメイド作家へ転身。ハンドメイド初心者が、フルタイムの本業と両立しながらワイヤーアクセサリーの出品を続けて7年目。達成感を味わったミューさんのストーリーです。

作家への道は、療養中のアクセサリー作りから

—— 本日はありがとうございます。まずは、ミューさんがハンドメイドのワイヤーアクセサリーを出品するようになったきっかけをお聞かせください。

実は7年前に私自身、手術が必要になり入院することになったのですが、退院後の1カ月間の自宅療養中にふと、小さいころからミサンガや細かなアクセサリーを作るのが好きだったなぁと思いだしたんです。

アクセサリー作りなら動かなくてもできるので、リハビリをかねてやってみよう!と、作り始めました。

もともと不用品の出品に楽天「ラクマ」(以下ラクマ)を使っていたのですが、だんだん作品数も増えてきたところで、今度はアクセサリーを売ってみたらどうだろうかとひらめき、出品。そうしたら一瞬で売れて、とにかくびっくりしました。その時から、ワイヤーでアクセサリーを作り続けています。

オーダーメイドの要望が売り上げアップの転機に

—— デザインは同じものを続けていらっしゃるんですか?

ワイヤーアクセサリーであることは変わりませんが、デザインや質は、お客様の声に応えられるようアップデートしてきました。

あるとき、お客様から「名前のアクセサリーをオーダーで作れないか」という要望をいただき名前のアクセサリーを作るようになりました、また、オーダー作品は特別感があるので、長く使用できる高級な素材に変えてほしいというリクエストをいただくようになり、材質も変えました。

当初は安価なメッキのワイヤーを使っていましたが、メッキは着用するうちに変色してしまいます。高価な素材を触るのはとても怖かったのですが、リクエストがあったので14金コーティングのワイヤーを仕入れてみました。すると、とても扱いやすい硬さで、よりきれいな作品に仕上がりました。結局、作品の価格はそれまでよりも高い設定にはなりましたが、売り上げが伸びていくきっかけとなったんです。

—— 現在取り扱っている作品の価格帯はどれくらいですか?

約2,000円~9,000円です。

—— オーダーの要望をいただく前は、どんなデザインだったのですか?

以前は「Happy」や「Smile」などの単語を筆記体で作っていましたが、今はハワイ語やスペイン語、イタリア語などのおしゃれな言葉を使っています。あとはオーダーになります。

作業の大変さも楽しい気持ちでカバー

—— オーダーメイドが多いとなると、作業も大変ですよね?

いろいろと数作るようになると、デザイン面にしても、石の色の組み合わせにしても、作品の種類やテイストとしてラインナップ化されていきます。そのラインナップが今は大量にできているので、逆に大変なのですが、その中から選べば作りやすく量産しやすいというメリットがあります。

またワイヤーで文字を作る作業も、これまでに1万点くらい作っているので大変なことはなくて、いろいろな文字を作ることを楽しくやっています。
「こんなのできませんか?」とまったく新しいデザインのリクエストをいただく時は、それが形になるのか、形にした時に美しくなるのかということを検証するのに時間がかかりますが、楽しい作業です。

忙しい時に重要なのは、時間の使い方

—— 最大でひと月にどのくらいの数を販売されましたか?

そうですね、多い月は100~150個くらいです。

—— 150個だとすると、単純に計算して1日に5個の制作!本業もおありなので本当にお忙しかったと思いますが、そのなかで制作や管理、発送など、工夫されていたことはありますか?

人それぞれ考え方が違うこともありますし、お客様の好みやこだわりもありますので、カスタマーサービス的な管理としておひとりずつノートに記録するようにしていました。

制作時間については、本業があるとそれほど作れません。以前たくさんご注文いただいていた時期は、お昼休憩中に20分でお昼ごはんを食べて、残りの時間を制作に充てたり、常にワイヤーとペンチと石を持ち歩いて、ファミレスで料理が出てくるまでの時間や移動の乗り物の中など、ほんの10分の時間でも無駄にしないようにしたり、作れる場所ではとにかく作っていました。ですが、これは去年のオーダーが特に多かった時期の状況で、今は自分のペースで作れるようにしています。

—— ひとつ作るのに、だいたいどれくらいの時間がかかるのですか?

物によりますが、平均的には20分くらいですね。

ただ、ピアスの場合は作り終わってからワイヤーの先を研磨する必要があり、それに時間がかかるんです。まず大量に作って、一気に研磨。そのための道具も常に持ち歩いて、少しでも時間があるとやっていました。

—— なるほど、スキマ時間をいかに使うかということですね。ところで、ミューさんは販促やPRに関しては何か工夫されていますか?

多くの方がInstagramを利用されているようですが、私は1年前くらいからPRに利用するようになりました。Instagramで見せて、ラクマで販売するという流れです。また、売り上げにつながっていったのは、値段で検索した時に安い値段の作品が検索結果に出たことで、売れたのではないかと思います。

培った経験値で安くて高品質の材料を調達

—— 安価で高品質なものを提供するために「経営努力」的なことはされていたのでしょうか。

そうですね、数多く作っているので、ものすごい数の仕入れもしました。

材料を販売する店も、安くて良い物が買える店、高いのにクオリティの低い物ばかりの店といろいろありました。その間に素材を見極める目を養えたと思います。そして信頼できるバイヤーさんと知り合い、お取り引きさせてもらえるようになり、安くて良い材料を仕入れられるようになりました。

さまざまな種類の天然石 経営努力というよりも経験値が上がったからということでしょうか。お客様には安くてクオリティの高い作品をご提供できるようになったと思います。

最近は、「石の専門家ではないのによくそんなに天然石の目利きができるね」などとお褒めいただくこともあります。

ラクマのメリットは手数料の安さやランキングの面白さ

—— ラクマで出品を始めて7年くらいになると思いますが、最初からラクマだけで販売していたのですか?

ラクマは日用品の出品から入りましたが、ハンドメイド作品を出品するようになってからは、ほかのサイトでも販売していました。

なぜだかわからないのですが、ある時ラクマのフォロワーが一気に増えて、売り上げも上がったことがあり、これをきっかけに他のフリマサイトでの販売をやめました。またラクマの手数料が一番安く、作家ランキングが始まったこともあり、その後はラクマだけに出品させてもらっています。

ラクマの手数料が安いのは初心者の方にとって大きなメリットだと思いますし、ハンドメイドを取り上げたランキングもあって面白いので、ハンドメイドの出品を始めやすいと思いますよ。

それに、ハンドメイド専門のアプリだとたくさんの作品のなかに埋もれてしまいがちですが、ラクマは幅広いジャンルを扱っているため、ハンドメイド作品が埋もれにくく、穴場だと思います。

リピーター様も新規のお客様も大切に

—— 始められた頃と今ではお客様の反応に何か違いがありますか?

ありがたいことに、今はリピーターのお客様が多くなりました。

特にちょっと前までは、ラクマのプロフィールやInstagramで「何日に何を何点くらい出品します」というアナウンスをしていたので、リピーターさんが待ち構えて買ってくださってました。ただ、リピーター様にもご新規様にも平等にご覧いただけるよう、今は告知せず出品するようにしています。多くの方にお求めいただけたおかげで、ハンドメイドランキングでも1位を取らせていただきました。

ほしいと言ってくれる人がいなかったら意味がない

—— では、今のミューさんのモチベーションは何でしょうか?

やはり待ってくれている人がいるということ、お客様の反応や喜んでいただけることがモチベーションです。

作ることは楽しいですが、ほしいと言ってくれる人がいなかったらやっている意味がないですし、そうなれば本業もあるのでやめてしまうと思います。

最近、表参道でポップアップストアとして1日だけカフェで販売したのですが、お客様はまず私のことを知らなくて、見てすぐ買うという方はほとんどいません。

一方でラクマはインターネットで全国展開しているからか、購入のスピードが早いしリピート率も高い。そういった点がポップアップストアとはまったく違います。
やはり反応が感じられるというのはモチベーションとしては大きいですね。

本業と副業、両方あるからバランスがとれる

—— これだけの人気作家さんだと、ハンドメイド作家を本業にしたいと思ったことはありませんか?

思ったことはありますが、ずっとは続かないとも思いました。ハンドメイド一本だと、売り上げが気になって「売れない、売れない」とか「これダメなのかな」などの感情にとらわれてしまい楽しめなくなってしまうと思うんです。

ですが私の場合、本業があったため、ハンドメイド出品の方はあくまで副業。本業の仕事中に「あ、売れてる」って見る程度の気軽さで向き合えたので続けられたのだと思います。

ありがたいことに、私の人柄が好きとか、私の作品をつけていると落ち着くと言ってくださるファンの方もいらっしゃいますが、やっぱり副業だから落ち着いて取り組めるという面もあります。

本業で嫌なことがあっても、こちらの副業で喜んでくれる人がいると気持ちが上向くし、また逆も然りですよね。ハンドメイドを買っていただいたお客様からの反応で落ち込んでも、会社で上司から刺激を受けると、どちらもあってよかったって思います。

これから始めようとしている方には、私は副業をお勧めします。

ひとつのことだけの重みがのしかかってくると続けられない気がします。両方あるから切り替えることでき、バランス良くできるのだと思います。

欲やネガティブな気持ちはお客様に伝わる!?

こういう作品作りやクリエイティブなことは、気持ちが作品にものすごく反映されると思います。その空気感がお客様に伝わってしまうということなのかもしれません。たとえば、ちょっとでも売り上げを伸ばしたいと欲張ってみたり、気持ちがネガティブだったりすると結果に出てきます。

「うまくいかなかったらどうしよう?」とか「売り上げが伸びない」などの不安や悩みも、ハンドメイドをやっていく上ではあまりよくない感情だと思います。

これは私が学ばせてもらったことなんですが、ワイヤー素材がメッキから14金コーティングになって一気に作品の単価が上がり、売り上げも上向いた時、「これは、いけるんじゃない?」って勘違いした時期がありました。その時、お客様がサーっと引いていったように感じました。なぜお客様に伝わるのかはわかりませんが、これじゃいけないんだとその時に強く感じたんです。

また、人間だれしも忙しくなってくるとイライラすることがあると思いますが、私自身とても未熟なので、そういう状況を感じ取ってか、「急がなくて良いです。いつまででも待っていますから」などと温かいお言葉をくださる方が多いです。反対に、ご指摘やアドバイスをくださるファンの方もいます。そういう時に、自分の高慢さや未熟さなど、いろいろなことに気付かされます。私はそういった局面を通してお客様に育てていただいているなぁといつも感謝しているんです。

ハンドメイドを求める人は「人」を求める

—— お客様との距離感がとても近いんですね。

よく言われます(笑)。

私、ピアノ演奏も副業でやっているんですが、ハンドメイド作品を買ってくださったお客様と演奏会を一緒にやったこともあります。

ハンドメイドを求めてくる人は「人」を求めてくる人が多いです。だからなにより人とのつながりが大切だと思います。

その分、難しい点もあると思いますが、私は良い点ばかりのように思えます。お客様との交流はラクマの取引のみにとどまらず、中には作品を受け取られた時の写真や、私の作品も入れたコーディネートの写真、ほかにもいろいろな報告や嬉しいことをたくさん送ってくださるお客様もいて、それを見るのが楽しくて仕方ないです。お客様のエピソードのひとつひとつに自分が携わっていることの喜びを本当に感じます。

私の作品を撮影する時に使用しているお皿もファンの方から買わせていただきました。お皿に砂や貝殻をレジンで張り付けたものです。撮影方法もいろいろ試行錯誤しましたが、これが今のところ一番気に入ってます。

柔軟に対応する精神力も必要

ただ、出品のための撮影は難しく、時には写真と実物が違ったというコメントをいただくこともあります。お客様の期待通りの作品をお届けするために、なるべく色が直接見た時と近くなるよう、光の加減などに気をつかって撮影しています。

お客様のご期待に沿えなかった時はさすがにへこみます。ハンドメイド作品を販売するときは、ネガティブなコメントにも対応できる精神力も必要だと思います。

達成感を得た後は、初心に帰って作品作りを

—— ミューさんはそういった点も乗り越えて今があると思うのですが、ラクマで出品を7年も続けられたことをどう思っていますか?

続けて出品していくことで少しずつファンの方も増え、オーダーやリクエストが特に多い時期は、とにかく作ることで精いっぱいでした。そんなことを繰り返しながら、とても達成感を感じたのが去年でした。その時、ふとあることを思い出したんです。

ラクマで初めて売れた時、喜びのひとつとして「1年で100万円くらい売れるようになるのかな?」なんてワクワクした思いを抱いたことです。そのワクワクした思いは4年後に現実となったのですが、ラクマを続けて今はそれ以上の楽しみや喜びをもらっていると感じています。

—— 達成感を得られたということですが、今後はどのように活動されるご予定ですか。

今は本業とバランスよく両立しながら、楽しく作品を作っていこうと思っていて、ゆっくりマイペースで活動しています。私が楽しく作ったアクセサリーをお客様が喜んでくださる。そんな思いや初心を忘れずにこれからも続けていきたいと思っています。

—— ありがとうございました。

経験値の大切さ、お客様との距離感、また副業としてのメリットなど、を語ってくださったミューさん。いかがでしたか。

まずは気楽に始めてみることもひとつの方法ですね。そして売り上げの転機にもなるデザインや技術のアップデートのヒントをいろいろな作品から探ってみてはどうでしょうか。

取材・文/杉本多恵

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